歯列矯正の確定申告と医療費控

医療費控除という制度をご存知でしょうか?

医療費控除というのは、1月から12月の1年間に支払った医療費が10万円を超え、ご自分やご家族の医療費を支払った場合、確定申告の際に手続きをすると一定金額の所得控除を受け、納めた税金の一部の還付金を受け取ることが可能な制度です。申告は扶養関係のない共働きのご夫婦でも医療費を合計して申告することができます。さらに収入の多い方が申告することで節税効果を上げることが期待できます。学生である子どもや、田舎の両親に仕送りしている場合も、生計を共にしていると考えられるため医療費を合算することができます。

歯の治療は高価な材料を使用することが多くあり、並びに治療代も高額になります。しかし矯正歯科の治療は、審美目的が多いため、医療費控除の対象とならないと諦めてらっしゃる方も多いかと思います。しかし年齢関係なく、歯列矯正が治療の目的であると承認された場合は、一定金額の所得控除が受けることが可能で、医療費控除の還付金を受け取ることができます。

医療費控除の対象となるもの

まず発育過程のお子さんの歯並びの矯正は、歯や顎の正しい成長を促すために必要だと考えられているため医療費控除の対象になります。一般的には、中学生くらいまでの矯正治療は子供の矯正として扱われており、その判断は各管轄の税務署に委ねられているため、税務署に確認する必要があります。

また大人の矯正歯科治療で医療費控除の対象となるのは、噛み合わせが悪いことで、咀嚼(そしゃく)に問題を抱えていることが認められたり、歯並びが悪いことで発音に影響を及ぼしている、というような機能としての問題が生じている場合です。歯科医師が「噛み合わせ、もしくは歯並びが悪く、口腔機能的な問題があるために矯正歯科治療が必要」と診断し、確定申告の際にその診断書を提出すれば、医療費控除を受けることができます。

医療費控除を前提として治療をお考えであれば、その歯列矯正が医療費控除の対象となり、さらに診断書を貰えるかどうかを予め歯科医師に確認するようにした方がいいでしょう。

このように歯列矯正を受ける方の年齢や、歯列矯正の目的などから歯列矯正が必要と認められる場合の治療費用は、医療費控除の対象となりまが、審美を目的とした矯正歯科治療の場合は、医療費控除の対象になりません。

それでは矯正治療において、1年間に支払った医療費には何が含まれるのかをまとめてみましょう。

まず、歯列矯正のためのレントゲンなど検査費用および診断料が含まれます。そして矯正装置を使用する場合の装置代および装置の調整料、処置料、処方された治療に必要な医薬品の費用なども含まれます。しかし予防であったり、健康増進に用いられる医薬品の費用は対象外となります。この他にも治療のための通院費も医療費控除の対象になります。さらにお子様の場合、通院に付添いが必要な場合であれば、付添いされた方の交通費も含まれます。通院費は、診察券などで通院した日を確認できるようにしておくとともに金額を記録し、申請の際には領収書が必要になりますので大切に保管しておいて下さい。またタクシーなどの領収書がある場合は、それも保管して下さい。ただし、自家用車で通院した場合のガソリン代であったり、駐車場代などの費用は、医療費控除の対象にはなりません。

また、治療を行なっている途中で年が変わる場合には、それぞれの年に支払った医療費の額が、各年分の医療費控除の対象となります。さらに健康保険組合などから補てんされる金額がある場合には、その補てんの対象とされる医療費から差し引く必要があります。

治療費の支払いをデンタルローンで支払った場合、信販会社が立替払いをし、その立替分を患者さまが分割で信販会社に返済していくものなので、デンタルローンで支払った年の治療費は医療費控除の対象になります。但し金利及び手数料相当分は医療費控除の対象にはなりませんのでご注意下さい。

またデンタルローンを利用した場合は、患者さまの手元には治療費の領収書がないことが考えられますので、デンタルローンの契約書の写しを用意しておいてください。歯科治療費をカードで支払う場合でも、歯科医院発行の領収書を添付した書類と、カードローンの契約書の写しをお忘れなくご用意ください。

医療費控除の手続きの仕方は?

医療費控除を受けるための手続きは、確定申告によって行います。申告に関しては、申告書類を税務署に持ち込む他、郵送で送付したり、ネットによる電子申告も可能となっています。

万が一、申告をし忘れてしまっても、治療から5年以内であれば、さかのぼって医療費控除を申告することが可能です。控除の申告は、確定申告の提出期間に限らず、いつでも受け付けているので管轄の税務署に相談をしてみてください。医療費控除の申告をする際に用意するものは、医師による診断書、申告をする年の給与所得の源泉徴収票、医療費のレシートおよび領収書などが必要です。但し、平成29年分以降の確定申告からは、医療費控除は領収書の代わりに「医療費控除の明細書」の添付が必要となります。

また保険金で補ていされた金額がある場合には、その金額を証明するもの、デンタルローンなどでの分割払いの場合は、歯科ローンの契約書の写しや信販会社の領収書が必要で、医療費の領収書は税務署から領収書の提出、提示を求められた場合は必要になりますので、自宅で5年間は保存していただく必要があります。その他には、還付金を振り込むための申告者の口座番号、印鑑などが必要になってきます。

いかがでしたでしょか?

矯正治療は費用が高額というイメージがあり、尚且つ矯正装置によってかかる金額も様々です。基本的には健康保険が適用されない自由診療となりますが、医療費控除の対象となるケースもありますので、費用を抑えたいなど、気になる方は歯科医師に相談されてみてはいかがでしょうか。

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