歯がないリスク

65歳以上の介護を必要としない方を対象として、歯と認知症の関係性の調査をおこなったところ、ご自身の健康な歯が20本以上ある人に比べて、歯の残存数がほとんどなく入れ歯などを使用している人の方が、認知症のリスクが約2倍ほど高いことがわかりました。

歯がないことが認知症のリスクを高くする要因として、「咀嚼」との関係性が挙げられます。しっかりと噛むことで、脳に刺激が伝わることが認知症の予防になっていると考えられているのです。

歯がないと認知症のリスクが高まる?

歯根と歯を支える歯槽骨の間には「歯根膜」という薄い膜があり、噛んだ時の衝撃を吸収・分散することで歯や歯槽骨にかかる力を和らげるクッションのような働きをします。ものを噛むと、歯がこの歯根膜に約30ミクロン沈み込み、同時に脳に大量の血液が送り込まれます。噛むことにより歯根膜にある血管が圧縮されることで、血液をポンプのように脳に送り込むのです。ひと噛みで3.5㎖の血液が脳に送り込まれることから、しっかりと噛むことは脳に血液を送り込むだけでなく、脳に刺激を与え続けることになります。そのため、噛む回数が多いほど脳が活性化されて若返るのです。逆に歯の残存数が少ないほど、脳に送り込まれる血液量は少なくなり脳への刺激が減るので、脳機能が低下してしまい認知症に繋がるのです。さらに、残存数が少ない方ほど、脳の海馬(記憶を司る部位)や前頭葉(思考や判断し行動する機能を司る部位)の容積が小さいことや、認知症ではない方の歯の平均残存数が約15本に対して、認知症の方の平均残存数は約9.5本という結果などから、健康な歯の3分の2を失うと認知症のリスクが高まるということが、研究結果で明らかになっています。

歯周病と認知症の関係

歯を失う大きな原因である「歯周病」が「アルツハイマー型認知症」を引き起こすということもわかっています。歯周病は一般的に35歳頃から発症率が上昇していきますが、若い方も歯周病に罹患している場合も多いのです。35歳頃から発症率が増えるのは、加齢による免疫力の低下が要因だといわれており、歯周病菌で歯茎に軽い炎症が起こっても修復のスピードが追いつかず、結果的に歯周病が進行してしまうというのです。

歯周病とアルツハイマー型認知症との関係性ですが、歯周病菌が出す毒素によって歯茎が炎症を起こしてしまい、炎症物質である「サイトカイン」が血液とともに脳に流れ込むと、脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質のゴミが溜まることがアルツハイマー型認知症の大きな原因だといわれています。また、歯周病の患者さんの脳内に「アミロイドβ」が溜まることで、脳のシミである「老人斑」ができ、歯周病菌がこの老人斑を増やすことに関与していることが明らかになりました。それだけではなく、脳内には歯周病菌が産生する毒素も増加していたことがわかりました。毒素が強くなることにより、脳の炎症も強くなってしまい、本来は外部からの敵を攻撃するはずの免疫細胞が異常に活性化することで、脳の神経細胞を攻撃して神経伝達に異常を起こすことがアルツハイマー型認知症を悪化させているのです。

他にもマウスを使った研究では、歯周病の原因菌によって産生される「酪酸」という口臭の原因となっている物質を、健康なラットの歯茎に注射したところ、脳内の各部位で酸化ストレス(酸素が体内の細胞や組織などに結びつきダメージが蓄積すること)が上昇し、中でも海馬でのストレスが顕著だったということがわかっています。酸化ストレスによって細胞や組織が悪影響を受け、認知機能が低下するという可能性は十分考えられます。このように、歯周病と認知症(特にアルツハイマー型認知症)との関連は現在でも研究がおこなわれています。

認知症の予防のために大切なこと

歯周病は初期段階の歯肉炎であれば、ご自身で正しいブラッシングなどをおこないプラークコントロールができていれば、歯茎を健康な状態に戻すことが可能です。しかし、進行して歯周炎になると、歯科医院での治療が必要になってしまいます。歯周病の予防、そして早期発見・早期治療を実現するためにも、正しいセルフケアと歯科医院での定期的な健診と歯のクリーニングが重要となります。また、しっかりと噛むことが脳を刺激し活性化させることから、歯並びや噛み合わせが正しく整っていることも大切です。私たちの体は、姿勢のバランスが崩れてしまったときに、無意識に「抗重力筋」と呼ばれる筋肉を働かせてバランスを保ちます。この「抗重力筋」の一つが噛む筋力である「咀嚼筋」なのです。安定した姿勢を保つためにも、咀嚼筋を鍛えることは欠かせません。さらに、しっかりと噛むことは、がんや生活習慣病の予防や免疫力の向上、口臭予防、幸せホルモンと呼ばれる脳内ホルモンの「セロトニン」の分泌を促すなど、身体に様々な良い影響を与えます。歯並びや噛み合わせが悪い場合は、歯列矯正治療を受けることで改善することが可能ですので、一度大分県の歯科医院を受信して頂くことをお勧めいたします。

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