血友病患者の歯科治療

血友病とは

血友病とは、血液が固まるのに必要なタンパク質が不足している為、血が止まりにくくなる病気のことを言い、日本には約6,000人の血友病患者がいるとされています。血を止めるには、血小板、血管、血液凝固因子が必要です。血液中の一群のタンパク質が働き、最終的にフィブリンの網の膜が血小板血栓の全体を覆い固めて、出血を止めようとするのですが、血友病の患者さんは、そのうちの一部が遺伝的に不足しているため反応が途切れ、出血が止まりにくくなります。

第Ⅷ(Ⅸ)因子が不足しているタイプを「血友病A」といい、第IX因子が不足しているタイプを「血友病B」といいます。なお、血友病は血が止まりにくい病気であり、出血しやすい病気ではありません。

血友病患者の歯科治療

血友病のお子様の歯に配慮しておくことは、出血の予防につながるため、非常に大切なことです。虫歯予防のため、長期にわたり哺乳瓶を使用したり、ジュースやイオン飲料を飲む習慣をつけないようにするといいでしょう。

乳歯は6〜12歳頃にかけて生えかわりますが、抜けた時にも、たいていの場合はすぐに血が止まることが多いです。歯が生え変わる時に出血したら、うがいはせず、綿ガーゼを丸めて噛ませ、2〜3日は柔らかいものだけ食べさせるようにしてください。2時間以上、出血が止まらない場合は凝固因子の補充が必要な時があります。血友病患者の治療は、不足している血液凝固因子を薬によって補充する「補充療法」が施されます。不足している因子を人為的に補充してあげることで、止血効果が生まれます。出血時に注射するだけでなく、運動会などのように出血する可能性が予想される時に、事前に注射する予備的補充療法、更に将来の血友病性関節症を避けるため、定期的に注射をする定期補充療法といった治療法も行われています。

抜歯を行なった後や口腔内のケガなどで傷口が大きく、止血が困難な場合の処置には大きく分けて2つの方法があります。1つ目は薬剤による方法です。薬剤による止血は、「傷口に用いる薬」と「全身的に用いる薬」があります。

傷口には、血管収縮剤であるエピネフリンが主に使われますが、その他に酸化セルロースの凝血促進作用を利用したサージセルというガーゼを当てたり、トロンビンの液体などが用いられます。全身的に使用する薬は、血友病の患者さんの場合、凝固因子製剤が中心になります。その他に血栓が溶解しないように作用する抗プラスミン剤のトラネキサム酸を併用します。毛細血管壁を丈夫にする作用があるカルバゾクロムといったお薬が使われることもあります。

二つ目に圧迫による止血の方法です。一般に抜歯後、清潔なガーゼなどで出血している部分を強く圧迫すると、だいたい20~30分で止血できますが、血友病患者さんの場合、出血部の傷が落ち着くまで、圧迫と傷の保護が必要になります。そのため「歯肉パック」とよばれる保護材を歯肉にはったり、「保護床」と呼ばれるセルロイドなどの樹脂製のカバーで傷を覆う処置を行うことがあります。このような保護材を1週間程装着し、その後取り除きます。一旦止血しても1週間後に再出血を起こしたというケースもあるので、経過観察はしっかりと行い、再び出血してしまった場合は、直ちに歯科医や主治医に連絡を取ってください。

血友病の家庭療法

1983年に家庭療法が認目られ、現在は、出血した際の補充療法よりも、定期補充療法が血友病治療の主体になりつつあります。家庭療法や自己注射の最大の目的は、早い段階で出血を止めたり防止をすることであり、慢性の障害を残さない様にする意味があります。身体が痛い、筋肉が痛い、関節が痛い、お腹が痛いなどは、異変が起きていることを示す信号であり、それは出血の場合もあれば、そうではない場合ももちろんあります。仮に痛みの原因が出血ではない場合でも、痛みを感じる部分は出血しやすい状態に陥っている可能性が高いので、輸注により出血が予防できます。出血なのかどうなのかを迷った際、基本的に何か違和感や痛みを感じるときには迷わず輸注する方がよいでしょう。

また家庭療法は出血時に通院する時間や費用、また身体的負担の軽減を目的としています。定期検査を受診し、主治医の評価と指導を受けるのもいいでしょう。適切な輸注量、輸注方法の厳守や輸注記録提出し、主治医に自分の輸注方法が正しいかどうか、定期的にチェックしてもらうことを推奨します。

出血時の注意

解熱鎮痛剤を使用する際、アスピリンという主成分は正式名称でアセチルサリチル酸という化学物質があり、これは血小板が凝集する働きを弱めます。そのため、血液は固まりにくくなり、胃を痛めたり、出血を生じさせる場合があります。薬の成分にアスピリンが含まれているか分からない場合は、主治医、または薬剤師に相談し、処方箋以外の薬を投与する際は必ず主治医に相談し、指示を仰いでください。

またインドメタシン(インダシン)という成分も血小板の働きを弱めて血を固まりにくくするため服用しないようにしましょう。それ以外には、出血時の入浴は避けてください。出血した場合、局所を冷やし、安静に過ごしましょう。血友病のことを十分理解している歯科医院は正直少ないのが現状です。

信頼のおける歯科医院、もしくは血友病治療施設に血友病のことを伝え、事情を知った上で治療を行うのが一番安心です。

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