インフルエンザと歯磨き

毎年冬になると流行するインフルエンザ。インフルエンザの予防には手洗い、うがい、予防接種、マスクの着用などを連想する方も多いのではないでしょうか。そんなインフルエンザの予防ですが、「歯磨き」も予防につながることをご存知ですか?

今回はインフルエンザと歯磨きの関係性についてご紹介します。

歯磨きがインフルエンザ予防につながる?!

歯磨きや口腔ケアをおろそかにしていると、プラーク(歯垢)が溜まり、虫歯や歯周病の原因となることはよく知られていることでしょう。歯垢には、気管支炎や肺炎などの発症や重症化にかかわる「肺炎球菌」や「インフルエンザ菌」、重篤な感染症の原因となる「黄色ブドウ球菌」や、「緑膿菌」「セラチア菌」などの細菌も含まれていると言われています。口の中には約30億~6000億もの細菌が存在すると言われており、これらの細菌は「プロテアーゼ」という酵素を出す特性を持っています。

このプロテアーゼと呼ばれる酵素は、インフルエンザウイルスへの感染を手助けしてしまうもので、口腔内を不潔な状態にしておくと、細菌が増殖し、プロテアーゼがインフルエンザウイルスを粘膜に侵入しやすくしてしまい、インフルエンザに感染しやすくなるということを意味します。よって口腔内のケアをしっかりと行い、細菌を減らすことで、唾液中のプロテアーゼ量が減り、インフルエンザの発症も抑えられると考えられています。実際に、介護福祉施設で行われた研究で、歯科衛生士が週に1度、歯磨きなどの指導を行い、プラーク(歯垢)の除去を行ったところ、実施しなかった施設と比べて、インフルエンザの感染率が10分の1に激減したという報告があります。

インフルエンザ予防の歯磨きのポイント

インフルエンザを予防するための歯磨きで気をつけたい3つのポイントをご紹介します。

まず一つ目は、就寝前の歯磨きは特に念入りに行うといいでしょう。寝ている間は唾液量が減るため、必然的に細菌が繁殖しやすい状態になります。就寝前の歯磨きをより丁寧に行うことで細菌の増殖を防ぐ効果が期待できます。

そして二つ目は、起床後、すぐに歯磨きを行うといいでしょう。起床時は、睡眠中に多くの細菌が繁殖し、生息しています。うがいや歯磨きをしないまま、朝ごはんを食べたり、飲み物を飲んだりすると、体内にウイルスや細菌を一緒に取り込んでしまうことになります。起床時の口腔内にはスプーン1杯分の大便があるのと等しい細菌の量が生息しているという一説もあるので、起床時は朝食や飲み物を飲む前に歯磨きを行うことが予防の一歩につながるでしょう。

三つ目のポイントは、細菌は歯だけではなく、舌の上にも多く生息しているため、歯磨きと一緒に舌磨きを行うことを推奨します。舌磨きのやり方は、歯ブラシで数回、舌をまんべんなく軽くこするだけと非常に簡単です。ただし、舌の粘膜はブラシでこすると傷ついてしまうため、優しくこすることが大切です。専用の器具を使って磨くのが一番望ましいです。

また、歯を磨く際には、1カ所につき20回以上磨きましょう。時間に換算すると最低でも3分はかかってしまうので、入浴中に磨いたり、テレビを見ながら磨くと、苦痛にはならないでしょう。

歯ブラシの取り替え時期

歯ブラシを最後に替えたのはいつか覚えていますか?
意外にも、覚えてない人は多いのではないでしょうか。口腔内には約300種類もの細菌が生息していると言われ、口腔内細菌の数は、歯をよく磨いている人で、10002000億個、あまり歯を磨かない人で、40006000億個、ほとんど磨かない人は、なんと1兆個とも言われています。

その細菌たちをこすりとっているのが歯ブラシですから、毎日使う歯ブラシは、何千何万もの微生物や細菌のたまり場になっているのです。さらに歯ブラシが置いてある洗面所は、お風呂場に近いことも多く、比較的湿気がたまりやすい場所だと言えます。よって歯ブラシの細菌はよりいっそう増殖してしまうため、定期的に歯ブラシを取り替えることが大切です。幸い、歯ブラシに生息する細菌は「常在菌」といい、人の口の中に常に存在する細菌であるため、あまり攻撃的な細菌ではありません。しかし、前章でも述べた通り、中には危害を加える細菌もあります。風邪やインフルエンザの病原菌や、ウイルス ・風邪などを引き起こす「ヘルぺスウイルス」、耳や鼻、のどに影響をきたす「ブドウ球菌」や「カンジダ菌」というカビの一種も存在します。この細菌は口の粘膜の病気や、虫歯、歯周病などにも関わる細菌であり、これらのような菌やウイルスが歯ブラシについたまま磨いてしまうと、インフルエンザを含む様々な病気になり兼ねません。これらの細菌やウイルスから自分の身を守るためも、1ヶ月に1本を目安に歯ブラシを交換することを推奨します。

インフルエンザは、小さいお子さまや高齢者の方、病気を患っていたり、治療で免疫力が低下した患者さんにとって、生命にかかわる重篤な感染症といえます。ご自身が感染しないように予防することはもちろんのこと、ご家族や周囲の人々にうつさないように配慮が必要でしょう。日頃の適切な歯磨きやプロによる口腔ケアを行うことで、インフルエンザの感染率を10分の1に減らせる可能性が示されたことは、インフルエンザ予防にとても大きな効果をもたらすと考えます。信頼の置ける歯医者で、プロによるブラッシング指導や口腔ケアの指導を受け、日頃から口腔内を清潔に保つよう意識をし、インフルエンザ予防の1つに加えてみてはいかがでしょうか。

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